マーケットの仕入れ人≪ホーガン、銀幕に登場≫

カーンとゴングが鳴る。

長い金髪をなびかせたレスラーが相手をロープに投げつけ、

その反動で戻ってくる敵のノド元にアックス・ボンバーが炸裂!

ご存知、ハルク・ホーガンの登場だ。

   
このプロレスラーが主演する「ロッキー」仕立ての痛快アクション

“No Holds Barred”は今年6月全米で公開されるや、同時期公開の

「インディー・ジョーンズ/最後の聖戦」(1989)の2位に浮上、

3日間で5百万ドル(約7億円)の好成績をあげたゴキゲン映画。

   
この映画来年春に日本で公開される。

「最後の—」は、とっくに日本で公開されてるのに、

どうしてホーガンのはそんなに遅いのか。

それは映画の買付け、配給システムに大いに関係がある。

  

外国映画が日本に配給されるケースは二つある。

一つは“産地直送”タイプ。たとえば今から話題を呼んでいるワーナーMP「バットマン」。

ワーナー映画は日本に支社を持ってるから、この映画を直接日本に持ってこれる。

つまり産地直送。日本で一番売れそうな正月映画として公開してやろうというハラだ。
やはり正月用の「ゴースト・バスターズⅡ」(コロムビア) 

「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ」(UIP)もこのタイプ。

   
もう一つは日本の映画会社が世界のあちこちにトコトコでかけ、自分で商品(映画)を買ってくるタイプ。

外国には年に何度か大きな映画祭があり、築地の魚市場に仕入れにいくように(?)でかけていくわけだ。

   
一番有名なのがカンヌ映画祭で、当スーパーマンもこの5月にカンヌへトコトコでかけてみた。

  

   

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。

戦争の犠牲者たち≪軍隊用語は省略で≫

さて、本日は軍隊用語の英語レッスンだ。
軍隊は忙しいので、いろんな表現をイニシャルだけですませてしまう。

 

よくお目にかかるところでは、「ASAP」。これは“As soon as possible”。

「できるだけ早く」って意味で、中学の時、習ったでしょう。

  
「MIA」は“Missing in a action”。戦闘中の行方不明者だ。

  
「C-rats」はC級のデキの悪いネズミ、じゃなくて“Combat rations”。

戦場へ持っていく携帯食料のこと。

  
“ベトナム”は「ナム」。“最高”はNumber one、“最低”はNumber ten。

貧しいアジア人が住んでる掘立て小屋みたいな家は“フーチ”と呼ぶが、

これは日本語の「ウチ」(家)からきたみたいだ。

  
Cherryはサクランボでも処女のナニでもなく“新兵”の意味として使われる。

  
また、アチラでは本隊や部隊にニックネームがついている。

パルマの新作でも「こちらサイレント・ツイン、スーパーマン02どうぞ」とやっていた。

日本の自衛隊でも無線で「こちらかぐや姫、ネズミ小僧どうぞ」なんてやってるのかな(まさか、ね)。

  
ところで、オロンガポの町に行った時のことだが、

土地のバアさんにいきなり日本語で「バカヤロー」と言われた時は驚いた。
何だと思ったら、その昔、日本兵から唯一習った日本語なのだそうで、バアさん、

明るい顔で「こんにちは」のつもりで言ったのだ。

   
考えてみると、これも“戦争の犠牲者”なのかもしれない。

  

 

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。

戦争の犠牲者たち≪暗いベトナム物≫

第一に軍隊用語。

手榴弾一つをとっても、破片手榴弾(fragme-ntation grenade)、

煙幕手榴弾(smoke grenade)と、いろいろ種類がある。

さらに“サンバー”という手榴弾を撃つ砲なんてのもあるんだな。

 
ヘリだって、“スリック” “スネーク” “ARA”だの種類の違うのが

バタバタ飛んでくる。

   
それに階級だ。英語じゃ、よく“ルーテナント”ってのが出てくるが、

これが少尉か中尉か決まってない。“サージェント”なんて最先任上級曹長から、

ただの3等軍曹まで七つも八つも階級が分かれてる。
   

さらに兵隊のスラング。

ベトコン一つ呼ぶのにも「VC」「コン」「グークス」(本当は東洋人の意)と、かしましい。

それにしても第二次世界大戦が壮大で過激なドラマだったとすると、ベトナム戦争は、

ちまちまとセコくて、いまだにウジウジと煮えきらないところがある。
同じ戦争映画でも、ベトナム物は観終ってスッキリしない、気持ち悪い。

   
このパルマの新作も、普通のベトナム人の村の娘を、米兵たちが奪って犯しちゃう実話ストーリーだが、

白人米兵の目にはアジア人の普通の娘も娼婦もみんな同じに映るらしい。

   
最近は減ったが、マニラを徘徊してる日本人のスケベ旅行者たちも似たような目で、

フィリピン女性を見てたよナ。
昔、オロンガポ(フィリピンの軍港の町)へ行った時、米軍の基地のゲートからは、

すぐに娼婦街が続いていて、米兵たちは街へ出ると娼婦以外に出会わない構造になっていた。

  
そんな米兵たちが日本にきたらやっぱり同じような目で日本の娘たちを見てるのだろうかと思うと

気が重くなる。でも、ベトナム戦争って一体何だったんだろうと、ふと思う。あの頃はベトナム反戦、

ピース(平和)、ラブ(愛)なんて、みんな文化してたが。今やそこの難民が長崎に押し寄せる時代である。

   

 

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。

戦争の犠牲者たち≪デ・パルマの新作≫

古くは「殺しのドレス」「キャリー」、最近は「アンタッチャブル」で我々をゾクゾクさせてくれたブライアン・デ・パルマ監督が「フルメタル・ジャケット」のキューブリック監督よろしく、ベトナム戦争映画をお作りになった。

      

70ミリ大作“Casualities of War”(戦争の犠牲者たち)。

 
主演は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の人気者、マイケル・J・フォックス。

   

彼氏をいじめる悪軍曹に、かのマドンナに三下り半をつきつけられ、

撮影中に誰かの頭をブン殴って留置場に放り込まれたショーン・ペン。

   
この二人、映画の中で敵対関係を演じるのだが、実生活でも仲が悪く、

撮影中もケンカばかりしてたというから、映画の迫力も、なかなかだ。

   
今、開催中の東京国際映画祭の招待作品で、10月3日に東急文化会館の

オーチャード・ホールで上映される(日本公開は来春)。

    
さてこの映画の翻訳を始めたが、戦争映画ってやつも、なかなか言葉がヤッカイだ。

  

 

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。

広東語に大往生≪“洋鬼”って何!?≫

ええい、ままよと適当に訳してできた字幕原稿をかかえて、もう一度映画を観て、

つき合わせをするのだが、あれ、このセリフは誰のだっけ・・・とオタオタしてると、画面はもうずっと先に進んでる。ビデオならストップしてもう一度ってこともできるが、フィルムはひたすら回るだけ。

 
かくしてこの映画では、みんなが泳いでるシーンに、その前の「おい、あの海で泳ごうぜ」なんて字幕が入ってしまった。映画祭にはこの初号のプリントがそのまま上映されたから、いや~、恥ずかしかったな!

 
さて今回はカンフー映画からチャイニーズ・イングリッシュ・レッスンといこう。

漢字は読むだけならわかりやすい。たとえば「出来!」Come out!は“出てこい”。

「長話短説」は、“長い話を短くいえ”。英語なら“Cut your speek short”ってとこかな。

  
じゃあ「鬼婆」ってわかる?オニババじゃない。

英語で“Foreign woman”“外人女”って意味。もちろん下品な言い方だ。

   
外人Foreignerは「洋鬼」。昔中国の人は日本人をののしって「東洋鬼」なんて呼んでたこともある。

「鬼」には“外人野郎”って意味があるのだ。

  
もっと続けたいが、紙数と時間がない。さぁ、これから成田へ車でブッとばそう。

  

 

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。