TV台本との違い≪字幕版との大いなる差≫

翻訳者にとって、吹替えの一番の魅力は、

もとの台詞が見る側に聞こえないってことだ。
だから何を、どう日本語でしゃべらせてもかまわない、直訳しようが意訳しようが、誤訳しようがどうせわかンないンだから知ったこっちゃねえやー。

 

なーんてことはないが、とにかく字幕とくらべて制限が大幅に緩和されているのがいい。制限あるとすれば、俳優の口パクに声優の台詞を何とか合わせてやることぐらいだ。

  
まず字幕の制限がない。

一行10文字、計二行の世界でヒーヒーいってる身からすれば、

これはもう天国快楽といわずしてなんといおう。
やれ常用漢字だ、いや当用漢字だと文字使いで頭を悩ますこともない。

実にノビノビ、自由ホンポーに仕事ができる。

  
テレビの翻訳料は字幕スーパーのそれより実は多少安いのだが、

それを除けば、これはなかなか楽しい仕事なのだ。

  

だが、欠点もある。

吹替え版てやつはいっさいがっさい、画面に流れている台詞・発声は、

すべて日本語に直さないといけない。二人同時にしゃべってれば二人の台詞を、

そのバックにラジオかテレビのアナウンスが流れていればそれも訳し、

声優さんに話してもらう。ここは関係ないからいいやーではすまされぬ。

これが大変な作業になる。

 

  

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。