翻訳家列伝≪スーパーマン列伝≫

『クロコダイル・ダンディ』や、『ラスト・エンペラー』そしてウッディ・アレンの映画はこの人でないとダメといわれる翻訳者が進藤光太氏。小生が子供の頃、TVで『名犬ラッシー』なんてのを胸ワクワクで見ていたが、その頃、確かに“吹き替え翻訳・進藤光太”と出ていたっけ。

 
聞けば『スーパーマン』も『サンセット77』も『ベン・ケーシー』も、

みんな進藤さんの担当だったとか。懐かしいやら、すごいやら。

  
でも昔はテレビの翻訳料は、映画字幕の翻訳料より、ずっと安かったそうだ。
当時、大卒の初任給が一万五千円くらい。テレビの翻訳料は30分番組で五千円。

それに対し、映画一本分は六万円くらいというからサラリーマン一年生の四、五倍はもらっていたことになる。

 
フランス映画『天井桟敷の人々』で、フランス庶民のタバコ“ゴロワーズ”を“ゴールデン・バット”と訳したのが、稀代の名翻訳家、秘田余四朗氏。この人、いつも待ち合いに女をはべらせ、酒を飲みながら翻訳していたという。ヨダレの出そうな話だなぁ。今は大卒の初任給の方がずっとイイ(!?)

   
さて、そんなスーパーマンたちの集団「映画翻訳家協会」のメンバーは総勢15人。

一年間にかかる外国映画の数が昨年で約五百本。今年は六百本になるのではとの予想で、

五、六年前のポルノを入れても二~三百本の頃とくらべると、数字の上では映画は大繁盛だ。
しかし、本当は大半がビデオを売るため、劇場にかけてハクを付けてやろうという動機不純なもの。
今や映画館はビデオ販売の宣伝道具に堕落しようとしている。映画ファンとしてはさみしいね。
とはいっても、ビデオで毎月発売される洋画は二、三百本。年間三千本あるわけで、

大半は字幕入りだから、スーパーマンにとっては“ビデオは神様です”。

  
当然、15人では足りず、最近では新人翻訳者が雨後のタケノコの如く成長している。

それはそれでやむをい得ないとしても、誤訳、誤字、脱字は当たり前、字幕知らずの

字幕作りが横行してるなんて悪い噂も入ってきた。

  
お説教をするつもりはないけれど、ただ好きだから、英語が得意だからではやはり長続きしない。

てっとり早くという気持ちもわかるが、やっつけ仕事では何より“信用”を得られない。

やっぱりジックリ下積みから叩きあげていく努力が大切だ。

   

 

本文は菊地浩司が20数年前に「プレイコミック」という漫画雑誌に映画翻訳家の舞台裏をコラムとして掲載していた時のものです。本文に一部適切ではない表現がございますことをご了承ください。